第5章 瞬間移動【テレポート】
短期合宿二日目。
「集まったな。今日は順応力と判断力を鍛える訓練だ。これから、小さいネズミ型のロボットを放つ。時間になった時、このネズミを持ってたチームの勝ちだ。因みに負けたチームは今夜の風呂掃除担当だ。」
ええ~と大きなブーイングが起きる。
昨日、宿の大浴場に入ったからわかる、あそこのお風呂、やたら大きいのだ。
チームは2~3人の先生が昨晩寝ないで考えたチームなんだとか。因みに、わたし達の邪魔をするヴィラン役の機械人形も現れるらしい。
「すっごいハードね…」
「そうだね…でもこの訓練、わたし向きかも。」
「そっか、一回持っちゃえばあとは時間まで逃げるだけ、逃げることに関しちゃアンタの右に出るものはいないもんねぇ!」
「うっ、」
春香の言葉が胸に刺さる。そうなのだ。わたしの個性は移動することに特化した個性。特別優れた身体能力を持つわけではないわたしは、悪意のある攻撃を回避することしかできない。
「そういやアンタ、昨日轟焦凍とはどうだったの?」
「…どうって?」
「とぼけんじゃない!気を使って先に部屋に戻ったけど、帰ってきたアンタといったらまあニヤニヤして…」
「そっ、そんな顔してなッ…!」
「いーやしてた!何よ、告白でもされたってわけ?」
そんなんじゃない、と言おうとした声をかき消すように、背後から聞き覚えのある声が聞こえる。
「蒼井。」
「とッ、轟くん!な、何…?」
「何じゃねえ、俺とお前同じチームだろ。聞いてなかったのか。」
「き、聞いてなかった」
轟くんは小さくため息を吐いた後、しゃんとしろ、と優しく前髪を梳かれる。
うわ、うわ。なにこれ。
微かに指先が触れたおでこが熱い。わたし、意味わかんないくらいどきどきしてる。
「ちょっと轟焦凍、前髪は女の命なんだから軽率に触るんじゃないわよ」
「…?そうなのか?悪い」
「うっ、ううん!大丈夫…!」
わたし、もしかして轟くんのこと、めちゃくちゃ意識してる…?