第2章 わたしの、個性
「お前以外知らねぇ」
「なッ…」
周りの女子の視線が痛い。そりゃそうだ、忘れていたけど、あの雄英体育祭以来、轟焦凍といえば大注目のイケメン雄英生だ。
ああ、わたしの平穏な高校生活が女子たちによるいじめ生活に変わってなるものか。
「な、何用…でしょうか…」
「…これ。」
轟くんが一枚の紙きれを差し出してくる。握られた跡があり、くしゃくしゃだ。
おそるおそる渡された紙きれを受け取り、開く。ちょっと待ってこれ…!
「おまえのテスト用紙。」
「ゔっ!」
そうだ。あの日失くしてしまったと思っていたC判定のテスト用紙だ。これ…見たのかな、うっ。よりによって雄英の優等生に見られるなんて…。
恥ずかしい、恥ずかしくて穴があったら入りたい。っていうかなんで今更…。
「渡すの、忘れてた。体育祭でばたばたしてたし。」
「あ…ありがと……」
本人に悪気は一切ないのだろう。というかむしろ返すのが遅くなったことに対して心底申し訳なさそうにしててむしろこっちが申し訳ない。あの轟くんにC判定のテスト用紙を一か月も持たせてしまうなんて。
「お前…なんでC判定なんだ?」
「なッ…んで、と、申されましても…」
なんなんだこの人は、人の気にしてることをずけずけと…!
返答に困り、明らかにショックを受けたような顔をしていたんだろう。轟くんはハッとして「悪い、」と呟く。
「お前の個性、見たときすげー個性だと思った。攻撃にもサポートにも使えそうで、何よりお前自身の判断力や身のこなしも悪くねえ。なのに、そんな奴でもC判定になるような厳しい学校なのかと…思って。」
単純な興味で見に来た…というわけ?確かにうちの学校だって遊んでるわけじゃない、プログラムは違えど雄英と同じように勉強と訓練の毎日だ。…けれど、違うんだ。
「…あの、場所、変えない?すごい…目立ってるので…」
「…そうだな。」
轟くんはそこで初めて周りの視線に気づいたかのように周りを見渡す。雄英の人ってみんなこうなのかな、肝が据わってるというか、…鈍い、というか。