第2章 わたしの、個性
蒼井あかり、個性【瞬間移動(テレポート)】
触れた物体を瞬時に別の場所へ移動させる。
発動にタイムラグは無く、連続で発動することで長距離移動も可能。
「合同…合宿訓練?」
「そう!しかもあの雄英とね!」
あれから一か月、わたしは特にこれといった変化もなく日常を過ごしていた。
放課後、高校に入って初めての友達になった春香が特大スクープ!とでも言うように駆け寄ってくる。
また職員室の前で盗み聞きでもしたのだろう。
雄英と合宿訓練。それが何を意味しているのか。
わたしでもわかる。
「転入の…チャンス。」
「そーゆーこと!」
雄英の実技入試は戦闘を主としたことだった。
ヒーローの中にはサポートを得意とする者ももちろんいる。しかし雄英の教師の中には、戦闘手段を持たない受験生を蹴落とすその入試方法に不満をもつものも居る…らしい。
ヒーローを目指す者として、雄英に入れるに越したことはない。
「まあそんな簡単なことじゃないんだろうけどさ。雄英、入れたらいいよね!」
「そう…だね。」
一か月前。あの事件の後、わたしはこってり先生にしぼられ、すっかり意気消沈…自信を無くしていた。
雄英の一年生のあの少年。同い年なのに、圧倒的な力の差。
元々自信なんてある方じゃないけれど、それでも、
「ねぇちょっとあれ…雄英の制服じゃん」
「っていうかあれ、この間の体育祭で大活躍だったヒーロー科の轟焦凍じゃない!?」
「うっそ、なんでこんなとこに!?」
外靴に履き替えて外に出る。やけに騒がしい。
校門前に群がる人込みを横目にそそくさと通り抜けようとすると、見覚えのある人物と目が合う。
一か月前、わたしが助けようとして、わたしを助けてくれた赤白少年だ。あの人…轟くんっていうんだ。なんでこんなとこに?うちの学校に彼女でもいるのかな。
あれちょっとまって、こっち来てない?
「おい」
「わっ、…わたし?」