第6章 Secret time【リリアデント・クラウザー】
「…どうかしましたか?」
「え」
「ジッと見ているので」
私はどうやら無意識的に彼ジッと見つめていてしまっていたらしい。
そんな私をクラウザーくんは不思議そうに見ていた。
「ごめんなさい。失礼だったよね」
「いいえ。大丈夫です。何かありましたか?」
失礼だったと思い慌てて謝罪をすると心配そうに私を見つめてくれるクラウザーくんがそこにはいた。
今日も何時も通りに昼休みの後半の時間で校舎外れの花壇へと足を運ぶとそこにはクラウザーくんが既にいた。
彼はお花が好きなようで、こうして度々時間があればここへとやってきていた。
ここの花壇の水やりの当番である私はその度に彼と話す様になっていったので今ではもう自然にお話できる様になっていた。
勿論最初はとても緊張してしまっていたのだけれど。
理由は至極簡単で、元々私が英語が苦手な事だった。
そしてそれにプラスして彼が私と同い年と思えないぐらいに大人びた彼の外見は最初の頃はどうしても緊張してしまっていたからだった。
でも彼はそんな私の緊張を知ってか知らずか…ゆっくりと分かりやすい英語を話してくれる時もあれば、辿々しい日本語でゆっくりと丁寧にお話してくれる時もあった。
そんなクラウザーくんとの日々を穏やかに過ごしていたのだけれども、先日【夢主友名前】ちゃんから聞いてしまった話に私の心はここにあらずであった。
改めて彼を見て思ったことはやはり最初に抱いた感想と同じでとても大人びた彼は、やはり同年代の女の子にモテるということだった。
別に今現在私が誰かから嫌がらせを受けているとかは一切ない。
でも、【夢主友名前】ちゃんから彼がモテる事。
そして彼と気軽に話している様に見える私が羨ましがられていることを聞いてしまった。
確かにクラウザーくんの隣に私が並んでも釣り合いが取れているとは一切思えなかった。
極々平凡な私と、テニスが強いからテニス部への強化選手として日本に留学生としてやってきた彼とでは確かに見劣りするだろう。
元々、そこまで自身に対する自信を持っているわけではないので私は勝手に1人でネガティブに落ち込んでしまっていた。
そんな私の気持ちが顔にも出ていた様でクラウザーくんは心配そうに私を見ていた。
彼の綺麗な瞳が心配そうに揺れているのを見て私はつい彼の行為に甘えてしまいポツリと自信のなさを漏らしてしまった。