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【短編集】テニスの王子様

第6章 Secret time【リリアデント・クラウザー】


あの出会いの後も私とクラウザーくんの関係は続いていた。
私があの花壇へ水やりに行くと彼は必ずあの場所にいた。
最初の頃はそれが不思議で少ししてから理由を尋ねれば彼は花が好きなのだと教えてくれた。

『ここの花壇の花々にはとても癒やされてます』

そう告げて頬んだ彼の言葉に嬉しくなったのを今でも覚えている。
その言葉は私の中での励ましの言葉になったからだった。
正直、誰が見ているかも分からない校舎の外れにある花壇の水やりは精神的にも大変だった。
草花は好きだけれども、1人で休み時間や放課後…時には早朝に世話をしにいくのは大変だったからだ。
でもクラウザーくんの言葉はそんな私の気持ちを吹き飛ばしてしまう程だった。
その言葉がとても私は嬉しかった。

だからこそ彼とあの花壇の場所で少しだけ同じ時間を共有出来ることは私にとって、とても大切な時間だった。
彼と過ごせる穏やかな時間が私はとても好きだと感じていた。

整った綺麗な顔立ちで佇む彼に春の風が吹く度に揺れる髪のサラサラと舞う髪。
それら全ての要素がどれもとても幻想的な光景で私はよく隣で見惚れてしまっていた。
何処か異次元的なその光景を隣で見ていられる特権が嬉しかった。

クラウザーくんと過ごした時間の事を思い出していると、【夢主友名前】ちゃんから「おーい?」と話しかけられて慌てて「ごめんね」と謝罪をする。
自分の世界に入りすぎてしまっていたようで私は慌てて現実へと意識を戻した。
そんな私の事を何となく察したのか、【夢主友名前】ちゃんは私を見て笑っていた。

「クラウザーくんとの会話、楽しんでるんだね。良かった」
「うん」

彼女は心から良かったという表情をして私を見ていた。
きっと私が英語が苦手なのを知っているから心配してくれていたのかもしれない。
彼女の優しさに私は心が温かくなる。

けれど、彼女の表情から…ふと笑顔が消えて言いにくそうな表情へと変化をする。
何かあるのかと私はゴクリと息をのんだ。

「ただね…こんな事を言うの良くないかもしれないれけど…」

そう告げて、【夢主友名前】ちゃんは静かに話し始めたのだった――。


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