第1章 恋のつぼみ 【越前リョーマ】
「子供扱いしないで欲しい」
「別にそんなつもりじゃないんだけど…」
「【名前】…先輩は昔から姉さんぶろうとするじゃん」
「いや歳上なのは事実だし」
「でもあの頃すっごく泣き虫だったよね」
「やめてよ恥ずかしい」
子供の時の話なんて最近はしたことがなかったから何だかくすぐったく感じる。
そう言えば私はリョーマくんの幼い時を知っているけど、それは反対に私も彼に自分の幼い時を知られていることなのだと思い知らされた。
「どーしよっかな」
なんてニヤリと悪い顔で微笑んだリョーマくんはやっぱりちょっと生意気で子供の時の可愛い彼は何処にいってしまったんだと少し残念だった。
「はぁ、降参です。私が悪かったです」
と両手を上げて降参のポーズを取ると、それはそれで彼に取っては不服だったようで、もうどうしろというのだ。
私は困り顔でリョーマくんを見つめた。
すると彼はため息をついた。
「もういいよ」
「ありがとう」
「…うん」
リョーマくんが機嫌を直してくれたようでホッと一安心した。
こうして2人で学校から家への道のりを歩くのは初めてなのに、何故か酷く安心した。
互いに話す話題も出てこず無言で帰り道を歩いているというのに別にこの空間が心地良いとさえ感じるなんてリョーマくんは不思議な子だなと私は思った。
チラッと隣を歩く彼を盗み見ようとすると何故かリョーマくんも私を見ていたようで、ふと目があった。