第1章 恋のつぼみ 【越前リョーマ】
「部長の手塚くんから見て実力とかどうなのかな~って思って」
「それは女子テニス部と何か関係があるのか?」
「うーうん。個人的に気になって。別に差し障りがあるなら答えなくても良いよ」
「…そうだな、越前は1年としてならかなり実力がある」
「そっか」
「あぁ。もしかしたら…まぁあまりこういう事を言うものでも無いのだが、これで青学の戦力は増したとは思う」
そう語る手塚くんの雰囲気は今まで見たことない物で、なんだか少し嬉しそうだと思った。
力を過信する事のない手塚くんにここまで言わせるなんてすごいことだなと感心する。
こうして2人で歩きながら話しているとテニスコートまで辿り着いてしまったので私は手塚くんに挨拶をしてから女子テニス部の方へと歩いた。
たどり着くまでの間に男子テニス部のコートを横目に覗いたがリョーマくんは特に見当たらなくて少し残念だなと思った。
手塚くんにあそこまで言わせるリョーマくんのテニスはきっと私が幼いころに目にした時よりも更に凄い事になっているのだろうなと想像するだけでワクワクした。
リョーマくんの事を考えているといつの間にか女子テニス部の方へと辿り着いていたので私は慌ててウェアに着替えて部活に顔を出したのだった。
***
「【名前】…先輩」
「あぁ、リョーマくん」
後ろから話しかけられて振り向くと部活帰りのリョーマくんが私を追いかけてきていた。
立ち止まって待ってみたがそんな必要もないぐらいにあっという間にリョーマくんは私に追いついた。
まさか帰る時間が同じになるだなんて思わなくて少しの驚きと、また嬉しさが込み上げた。
「先輩なんて付けなくても別に良いのに」
「【名前】、一応女子テニス部の部長なんでしょ」
「だから気を使ってくれるの?ありがとう」
「別に」
お礼を言うとふいっとそっぽを向いてしまったリョーマくんがなんだか子供っぽくて笑ってしまった。
それが彼の機嫌を損ねてしまうと分かっていても微笑ましくて仕方なかったのだ。