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【短編集】テニスの王子様

第5章 嫌い×好き=? 【跡部景吾】


「珍しいじゃねぇか」
「…別に。何となく」
「そうかよ。まぁ、基本的に最終確認の書類がここに来るからこの時期はこの量になるのはいつも通りだろ」

それだけ会話するとまた跡部くんは視線を書類へと落とす。
真剣に書類に向かう跡部くんの表情を見て私は自然とある提案が口から漏れていた。

「…手伝おうか」
「お前本当にどうしたんだ?」

訝しげに跡部くんが私を見る為に再度顔を上げた。
私も何故こんな提案をしてしまったのだろうかと自身の口から出た言葉に驚く。
本当ならあんな失態をおかした後だから2人きりなんて御免こうむりたいはずだったのに…。
それなのに何故か私は今、彼の仕事の手伝いをすると口走ってしまっていた。

「何となく。樺地くん程、書類捌きはうまくないけどいないよりはましでしょ」

そう言って私は跡部くんの机に積まれた書類を付箋毎に整理し始める。
今日は部活もないし、それに忙しいのに私を迎えに来てくれたお礼だと自身を言いくるめて私は彼の机に積まれていた書類を一心不乱に整理して彼の机に再度順番に起き始めていく。
そして私が置いた書類に目を通して瞬時に判断を下して跡部くんが書類を綺麗に片付けていく。
その連携された仕事の一連の動作に私は少しだけ高揚感を得ていたのだった――。

「…終わった?」

最後と思われる書類を跡部くんの机にのせてから私がそうポツリと呟く。
するとその書類も跡部くんが手に取り直ぐ様確認して仕分けをする。
これで不備で返却するものと、申請許可を出したもの、最終確認が私達ではなく先生預かりになるもので仕分けが終わった。

「ご苦労だったな」

私が嬉しさで書類を見つめていると跡部くんからそう声がかかり顔をあげる。
そこには私を見て笑っている彼と目が合ってしまう。
自信満々の彼の笑みなのに…私が苦手なはずの彼の笑い方のはずなのに何故か私の心臓がまたドキリと跳ねる。
一体昨日からどうしてしまったというのだろうか。

私はそれを誤魔化す様に『この不備書類は直ぐに返却する予定があるし移動させるね』と告げて私はそれらの書類の束を手に取る。
自身の想像よりもズシリと重くて驚いてしまい、少しだけよろけてしまう。
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