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【短編集】テニスの王子様

第5章 嫌い×好き=? 【跡部景吾】


ふと前を歩く跡部くんに視線を向ければ、彼の堂々とした振る舞いがよく表れた歩きが目に入る。
そんな彼の背中を見ていると、いつの間にか生徒会室の前まで到着したので跡部くんが開けた扉にそのまま滑り込む様に私も部屋に入る。
そして私を見るなり書類が束になっているものを持ってきてくれた後輩に謝罪をしてからそれらを受け取る。

私は自分がよく使用する作業場所へ移動して座り、そこに置かれている書類と先程の受け取った書類に目を通していく。
今日生徒会の仕事を忘れていた時以外は、今までサボっていた事は無かったのに丁度上半期の部活動決算の時期のせいでいくら書類を片付けていっても一向に減る気配がない。
逆に他のメンバーの手を離れて私の確認する分が増えていく書類の山に頭を抱えつつ私は必死に手と頭を動かしていくのだった――。


「んーっ…」

疲れたと思い、没頭していた書類から一旦離れて背伸びをする。
どうやら体が凝り固まっていたようで背伸びをして伸びていく体が少しだけ痛気持ちよかった。
そして伸び終わってから生徒会室を見渡せばいつの間にか他のメンバーが誰もいなくなっており私は驚いてしまう。

「え」
「他のやつなら自身のノルマが終わったから部活に行かせり、帰宅させたりしたぞ」

私の戸惑いの声を聞いただけで何を言いたいのか察したようで生徒会長専用の大きな机に向かって書類を捌いている跡部くんは私の声をかける。
彼の視線は書類から離れる事はなかった。

「お前も仕事終わったなら部活に行って構わない」

私にそう告げる跡部くんの視線は未だに書類から離れる事はなかった。
私と同じ時間以上に跡部くんの方が作業をしていたし、それに彼の手際のよさならとっくに全ての仕事が片付いているはずだった。
それなのに未だに積まれた書類が減っていないのは、最終確認を生徒会長がしなければいけないものが多すぎるのだろう。
この時期の仕事量の多さがよくわかる光景であった。

「…すごい量だね」

跡部くんに普段なら自身から話しかけないのに私は今日は何故か話しかけてしまった。
私に話しかけられた事に驚いたのか跡部くんが書類に視線を落としていたのに私の方を見るために顔をあげる。
私と跡部くんの視線がぶつかった。
彼の整った顔をまた直視してしまう形になったが、今度はおかしな胸の高鳴りもなく私は内心安堵した。
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