第1章 恋のつぼみ 【越前リョーマ】
私は誰にも聞こえない様にボソリとそう呟いた。
放課後に招集された部長会議という名の先生たちからの多少のお小言と今後のスケジュールに対する話は正直さっさと終わりにして欲しい物だと思った。
どうせ、中学生の部活なんだからお金の管理とかは先生たちだし、そんなにお小言ばかりでなくてもいいと思うんだけどな…と悪態を付いていると自分の前を歩く手塚くんの姿を発見し私は駆け寄った。
「手塚くん」
「…【名字】か」
私が話しかけると手塚くんはゆっくりと振り返った。
いつも通りの落ち着いた表情は特に驚いたもの等への変化はなく私は少しだけ残念な気持ちになった。
「部長会、お疲れ様」
「あぁ」
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
「先程の部会での件か?」
「待って、確かに前に少し意識飛ばしかけて聞いたことあるけど今日はちゃんと聞いてたよ!」
以前にどうしてもお昼後の部会で睡魔に勝てず眠りそうになったことがあり、意識を一瞬飛ばしかけて話が分からなくなり手塚くんに後日恥を忍んで聞いたことがあるが、毎回そんなことはしていない。
あの聞きに行った時の手塚くんの眉間のシワが増えた事は今でもよく覚えている。
あれは怖かった。
今もシワが増えかけたので慌てて否定をすると、いつも通りの表情へと戻ってくれたので私は安堵した。
「部会の事じゃなくて、男子テニス部にリョーマくん入部したんでしょ?」
「越前か?」
「うん」
私がリョーマくんの話題を振ると少しだけ驚いた表情へと変化し、私はちょっとビックリした。
こういった表情の手塚くんは見たことが無かったから新鮮な気持になる。