第5章 嫌い×好き=? 【跡部景吾】
「まぁ、私のことは良いや。【名前】ちゃん、明日おじさまの付き添いでパーティー連れて行かれるんでしょ?」
「え?あ…うん」
試験前に私が言っていた事を覚えていた様で、先程まで落ち込んでいたのが嘘のように瞳をキラキラと輝かせて私を見ていた。
その表情を見て、何かきっと彼女は私で楽しむ気だなと長年の付き合いから察して私は笑う。
「じゃあ、ドレスとかアクセサリーとか私が見立てても良い?」
「え!?ドレスとか必要なの!?」
私の返答に、彼女は目を見開いてから『当たり前じゃない!』と返事をしてから携帯でいくつかのページを開いて私に差し出す。
私は受け取った携帯の画面を覗いてから『えっと?』と彼女を見つめると『どの色が好き?』と聞かれて、きっと彼女のコーディネートに身を包むことになるのだろうなと私は笑う。
着飾る必要があると父から聞いた記憶が一切無かったが、きっと父の事だから忘れていたのだろう。
女性の身支度等に詳しい人は今は丁度家から出払っているのもあるし、仕方がない。
私はそちら方面の知識はあまりないし、ここは【夢主友名前】ちゃんの力を借りるのが1番良いなと判断して『宜しくお願いします』とうやうやしく彼女へ頭を下げれば『うむ!任せるが宜しい』と冗談口調で彼女が返事をするものだから私はカフェテラスであることを忘れて声を出して笑ってしまったのだった――。
***
「こんにちは」
「これはこれは!こんにちは、【名字】さん」
【夢主友名前】ちゃんがコーディネートしてくれたドレスやアクセサリーに身を包み、私は今日父に連れられてパーティーに同席していた。
愛想よい笑顔を顔に固定して父の挨拶する相手に会釈をする。
確かこんな感じで良かったと昨日ドレス一式を試着する時に色々と教えてくれた、【夢主友名前】ちゃんの言葉を思い出していた。
そんな風に彼女にレクチャーしてもらった事を内心何度も思い出しているといつの間にか父は1人の人と会話をしており、私の事へと話題がシフトしており私は気をそらしすぎた事を反省して話をきちんと聞き始めた。
「いやぁ、【名字】さんのところのご令嬢はご優秀ですな」
お世辞とは分かっていても相手の人に褒められて嫌な気はしない。
私は父の隣で愛想よく微笑みながら先方の話を聞く。