第5章 嫌い×好き=? 【跡部景吾】
「…今度こそ勝てたと思ったのに」
「【名前】ちゃんは最後の詰めの甘さが問題なんだよ」
「うっ」
カフェテラスで受け取った試験の結果を見て呟くと目の前でデザートを食べながら、【夢主友名前】ちゃんがそう告げる。
彼女の容赦ない突っ込みが私の心に突き刺さる。
でも事実なのだから仕方がない。
返却された試験の回答を見直せばケアレスミスばかりだ。
これらが全部合っていれば跡部くんの点数を超せた可能性だって十分ある。
本当に最後の最後で確認もちゃんとしたはずなのにこんなにも漏れがあったのだろうかと私は落ち込んでいた。
「本当に偉いよね」
私が試験の結果と睨めっこしていると、ポツリと呟く様に告げる彼女の声に驚いて顔を上げる。
いつもは笑顔でいることの多い彼女の表情が曇っている様に見える。
長年の付き合いだから、多分家の事で何かあったのだろうと察することだけは出来た。
彼女の家も私のところと同じ様に世間一般の目で見れば裕福層にあたるし、今回の試験の事で家で何かあったのかもしれない。
試験前から浮かない顔をしていたから『協力するよ?』と告げれば『【名前】ちゃんは跡部くんとの勝負があるから忙しいでしょ』と一蹴されてしまったので、ずっと気になっていたのだ。
それでも私に何も言ってくれないということはまだ話す段階ではないと思っているのだろう。
こんな時に親友の力になることが出来ない自分に歯がゆさを覚える。
どれだけ勉強等が出来ても、こういった方面で力になれないんじゃ意味もないなとも頭の片隅で思った。