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【短編集】テニスの王子様

第4章 Secret feeling 【白石蔵ノ介】


「あのね…私、白石くんにちゃんと言わなくちゃいけへん事があるの」

突然の【名前】の改まってのこの言葉に俺はここ数日感じとった違和感が間違いではなかった事を実感した。
ジワジワと嫌な予感が俺を蝕んでいく。
怖い。聞きたないと警告のように俺の心臓がドキドキと早鐘を打つかのように鳴り響く。
隣り合って座っとったけど、【名前】の顔を見るように俺は隣を向いた。
彼女は俺と目を合わせへん様に目の前の机の上にある教科書を見たまま言葉を続けていく。

「私ね…このままの状態じゃ駄目やと思ったの。せやから白石くんと――いっ」

【名前】は最後まで言葉を紡ぐことは出来へんかった。
それは何故かと言うと俺が彼女の腕を思いっきり掴んだからや…。

突然腕を掴まれて相当困惑しとるのがよくわかる。
さっきまで前を見とった瞳が、不安を孕んだ色で俺を見据える。
それでも腕を掴む手を緩める事は出来へんかった。
むしろ彼女の言葉をこれ以上聞きたなくて何も言えへん様になればええと思うどす黒い感情によって手の力がどんどん強まっていく。

「し、白石くん?あの…痛い…」

絞り出すような声が俺に訴えかけてくる。
でも俺はもうどうしようも無かった。
このどうしようもない【名前】への気持ちが溢れてきて、自身の力だけで抑えつけておく事に限界を感じとった。
せやから俺はうわ言の様にポツリと思いを呟いた。

「嫌や」
「え?」
「…すまん。無理や」
「えっと…何が?」

俺の要領を得ない言葉に【名前】が困惑しとるのが分かる。
それでも俺は自身の感情を今は完全にコントロールを失っとった。

「【名前】」
「しら――」

【名前】の名を呼ぶと同時に彼女の口を自身の唇で塞ぐ。
今まで頬ぐらいにしか触れたことのない俺の唇はコントロールを失って完全に自身の欲望のままに彼女の唇を堪能していく。
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