第4章 Secret feeling 【白石蔵ノ介】
ここ数日、【名前】の様子がおかしいと思っとった。
せやからこそ今週末の休みの日に俺の家で一緒に勉強をしようと誘うと驚いた表情をしてから彼女は何か意を決したかのように頷いた。
その表情を見て俺は、自身の中でガンガンと嫌な予感の鐘が鳴り響いてとるのを俺は感じ取っとった。
ズルい手をつこて彼女を手に入れてから俺は絶対に彼女に自身の行いはばれへんようにええ彼氏になりえる人物を演じてきたつもりだ。
【名前】にとって優しくてええ彼氏の様な存在になれるようにしてきた。
俺と付き合い初めたと分かるように…と、いつもなら絶対に色恋沙汰の話なんて自分からせぇへんのにテニス部の仲間には告げた。
みな反応はそれぞれやったけどみんな祝福してくれた。
何も知らへん謙也は嬉しそうに喜んでくれた事は今でも覚えとる。
チクリと痛んだ胸の痛みは気付かへんふりをした。
ほんまは付き合い初めたなんて言うもんやないのは分かっとった。
【名前】の心はまだ謙也に向いとったのやから。
それでも俺は周りから気付かれへんようにジワジワと埋めていった。
広がっていく噂は利用できるものは利用した。
【名前】への嫌がらせは彼女が気付かへんうちに対処もした。
彼女が傷付かへん様に…と気いつけて大事に大事にしとったつもりやけど、それはあくまでも俺の視点でや。
そもそもの俺が彼女を傷つける存在やったら――?
そう思うことも何度もあった。
それでも俺の隣で笑顔を向けてくれてる間は傍におりたいとも思った。
まぁ、離れさす気なんてさらさら無いんやけどな…とも思っとったけど。
そないな事を考えとったら日々が過ぎるのはあっという間で、約束の週末になっとった。
俺の内心なんて何も気が付かへん【名前】は俺の家に無防備にやってくる。
いつもの可愛らしくて無防備で無垢な彼女は警戒心なんてゼロやった。
俺の部屋に招き入れられて何も疑問も抱かんと彼女は普通に過ごす。
別に俺の部屋に来るのは初めてやないから普通の反応や。
今日もきっと今までみたく普通に受験勉強をして終わると思っとるのやろう。
俺だって最初はそのつもりやった。
【名前】の口から告げられた言葉がなかったら――。