第4章 Secret feeling 【白石蔵ノ介】
「元々白石くんがええって言って始まった関係やろ?自然と彼に惹かれてもおかしくないやろ?」
彼女には私と白石くんの馴れ初めエピソードをきちんと話しとった。
せやからこそ彼女は私の心の変化や現状の停滞について指摘できたのだろう。
自分の気持に向き合うきっかけをくれた彼女には感謝しかなかった。
「なんで白石くんは私に優しくしてくれたんやろう」
「好きやからやろ」
ポツリと私は今までずっと疑問に思っとった事を呟く。
なんで白石くんは私にあそこまで優しくしてくれたのだろうか。
忍足くんに片想いしとった私に何であそこまで優しく一緒に過ごしてくれたのだろうか。
白石くんとずっと一緒にいて不思議やった。
私はただただ彼の優しさに甘えとるだけで何もしてあげられてへんと思う。
それなのになんで…とずっと思っとった疑問に対して、【夢主友名前】ちゃんが『これは私の考えやから、ちゃうかもしれへんけど』と前置きをしてから話し出してくれた。
「好きな人には幸せにいて欲しい思うし、傷付いてるなら自分で助けてあげられるなら手を差し伸べたくなるんやないの?」
彼女は私の目をジッと見つめてから告げる。
「せやから【名前】も全国大会終わった後に白石くんに会いに行ったんやないの?」
その言葉を聞いて私は夏の終わりの事を急速に思い出していく。
そうや…。大会には部外者の私にはついていけへんからソワソワしながら待っとったあの日…。
あの夏の終わりが近い日に彼からかかってきた電話は元気のない声で『あかんかったわ』その一言だけやった。
いつもはそんな弱音なんてはかへん白石くんの言葉に電話越しでとても驚いた事を今でもよく覚えとる。
よく分からない焦燥感にかられて今直ぐ彼の元に行きたい気持ちにかられた事も覚えとる。
いつもなら遠慮してしもうて絶対に言えへんであろう言葉を私はその時に彼に告げた。