第1章 恋のつぼみ 【越前リョーマ】
「英二先輩、恥ずかしいんでやめてください」
「だっておチビ全然反応してくれなし」
「恥ずかしいからです」
ずいっと英二に向かって言ってのける姿は先輩に対するものではないなと思い、確かに大物な1年生だなと感心してしまった。
だけどよくよく横顔を見ていると何だか何処かで見たことある気がしてきて私はジッと見つめてしまった。
それに気が付いたのか1年生も私に顔を向け、そして少し驚いた表情へと変わった。
「え、【名前】?」
「…?」
「え、なになに!?おチビ、【名前】と知り合いなの?」
彼は私の事を知っているということは、やっぱり何処かで会ったことがあるのだろう。
こんな子、知り合いにいたかな?と首をひねるが、記憶にモヤがかかったかのように上手く出てこない。
「【名前】、もしかして忘れてる?」
「えっと、ごめんね」
「はぁ…俺だよ。リョーマ」
「……え!?」
私が驚きの声をあげる番だった。
リョーマという名前には覚えがあった。
私の知る人物で該当するのは1人しかいない。
「えぇぇえ!!!?あのリョーマくん!?」
「そうだけど」
少し不服そうにリョーマくんが返事をした。
私たちの横で英二は驚いた表情でキョロキョロとしていた。
「え、リョーマくん…もっと可愛かったから別人かと思った」
「ぶっ」
私が驚きのあまり失礼な事を言うと隣にいた英二が吹き出した。
その様子にリョーマくんの機嫌が下がっているのは目に見えた。
「え、えっと、ごめん。かっこよく成長しててわからなかった」
「いいよ、お世辞は」
「いや、半分ぐらい本気」
「結構半分はお世辞じゃん」
リョーマくんはため息をついてしまった。
私も本当に酷いことを言ってしまったものだと反省した。
英二はそんな私たちの横でいつまでも笑っていた。
それが私とリョーマくんが再会した残念な瞬間であった――。
***
「へぇ、【名字】と越前が」
「そうそう、驚いた~」
「ずっとフォローもせずに隣で笑ってただけじゃん、英二」
昼休みに英二と不二くんと3人で会話をした時に英二が朝の事を話題に出したので必然的に自分の誤ちも不二くんにバレて居たたまれなかった。
八つ当たりと分かっていても英二を責めた。