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【短編集】テニスの王子様

第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】


互いに艶っぽい瞳が、互いの瞳に映る。
ドキドキと心臓の音が煩い。
私と忍足くんの唇の距離が後数センチという時に突然、耳慣れた音と知らないメロディがこの場に大音量で流れた。

「――っ!」

私達は互いにビックリして距離を取る。
ぽかーんと一瞬固まってしまったがお互いに自分の携帯の着信メロディだと気が付いて電話に出る。
私の方の着信はまたもやお兄ちゃんからで何とも言えない気持ちになった。

「…はい」
「お。やっと出たか。どうや?上手くまとまったか?」
「……えぇ、一応」

少しだけお兄ちゃんの爆弾発言のおかげかもしれないと思いそう返事する。
今まで前に進むのが怖くて忍足くんとの関係を現状維持で停滞させてた事を考えれば、さっきの発言のおかげで進んだと思うと釈然としないが、お兄ちゃんのおかげでもあるのだと思った。
あまり正直にお礼は言いたくないが。

「良かったわ。とりあえずな、今日母さん達、夜は外で食べるみたいやから俺も出かけるわ。謙也くん呼ぶなら今やで」

前言撤回しよう。
やっぱりお兄ちゃんは余計なお世話しかしないし、言葉選びが下手くそだ。

「余計なお世話や!」

そう言って再度私はお兄ちゃんからの着信を思いっきり切った。
切り終わった時にふと忍足くんを見れば丁度同じタイミングで電話が終わったようで目が合う。

「なんか凄い剣幕やったけど…」
「お兄ちゃんからだったから気にせんといて」

私がそう答えると忍足くんは兄妹仲ええんやなと笑う。
そんなつもりはなかったけど、見る人によっては仲がよく見えてしまうのかと思った。

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