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【短編集】テニスの王子様

第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】


「あ、あの、ど、どないしてん?」
「すまん」

その言葉で私の胸がズキリと痛む。
恥ずかしくて体温が上がっとった体が急激に冷え込んでくるのがわかった。

やっぱり色々とドン引きされたのだろうと察した。
驚いて止まっとった涙がまた目尻に溜まってくる。

泣いちゃあかんで。
笑顔でお別れを言えへんと――。

そう頭で分かってはいてもドンドンと溢れてくる涙を抑えられそうになかった。

「そのな…今までちゃんと返事出来てへんかったけど、一緒にいて凄く楽しかったし俺も【名前】の事、好きやで」
「え」

せやけど私の想像しとった言葉では無うて、私に対して言われた言葉に対して驚いて間抜けな声を上げてしもた。
忍足くんの言葉が理解出来のうて、呆然としてしまう。

「…【名前】?」

言葉も発さず、また微動だにしなかったのを不審に思った忍足くんが私に声をかける。

「えっと……頭がうまく働いてのうて」

正直にそう答えると、私の体を抱きしめとった腕が緩む。
ほんで緩むといっぺんに私の体をぐるりと回転させられて強制的に忍足くんと向き合う形にされてしもた。
咄嗟の事で顔を俯けなくて呆けた顔で忍足くんを見上げてしまう。
私の顔を見て直ぐ様に驚いた表情をした忍足くんと目が合う。

「泣くほど嫌やった?」
「え…?あ、ち、ちゃうの」

うまく言葉にする事が出来ず私は首を全力で左右にふる。
嫌じゃないっちゅう事だけはちゃんと伝わって欲しかった。

すぐにでも嫌やないと伝えたいのに、泣いてしもたせいで言葉が上手く発せず、私は何度が深呼吸して息を整える。
せやけど出てくる声は若干震えとった。

「引かへんかったの?」
「何が?」
「家で勝手に会話に出して…彼女でもないのにキモいやろ」

私は疑問に思った事をありのままに伝える。
せやけど私の言葉を聞いてもドン引く様な表情は忍足くんはしなかった。
それどころか私にとっては驚く言葉を返してくれはった。
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