第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】
助けてくれた時から私は忍足くんが気になってしょうがなくなった。
見かければ目で追って…いつも男友達に囲まれてわろとった。笑顔も素敵だなって思った。
1年の時の文化祭でのバンド演奏もごっつカッコよかった。
それがめっさ格好良かったから、忍足くんの事を好きだって言う女の子も増えて、気が気じゃなかった。
せやけど告白する勇気もなくてズルズル引きずってたら他の子に先を越されてしもた。
その時はむちゃくちゃ後悔した。自分もしゃんと告白ぐらいしておけば良かったって。
何度も何度も後悔ばかりした。
こんな不完全燃焼な恋なんて辞めたかった。
でもそんな事は出来なかった。
自然とまだ忍足くんを目で追ってしまっとったし、知らん女の子と楽しそうにわろてたのも見てしまって苦しかった。
こないな状態でも恋を諦められへんかった。
そないな、うだうだと燻っとった私の耳に舞い込んだのは忍足くんとその子はうまくいかなかったという話やった。
確かにある日を堺に2人は一緒におるのを見なくなっとった。
喜んじゃいけへんと思ったけど、正直嬉しくなってしもた。
「せやからね、私あの時に勇気を出して告白したの。好きやって。友達からって言われても凄く嬉しかったの」
チョコを受け取ってくれたのが嬉しかった。
友達からって言われても嬉しかった。
連絡先を交換してメールをやり取りするのも楽しかった。
3年になったら同じクラスになった事は物凄く嬉しかった。
たまにコッソリと見に行ってた部活の練習も私が見とると休憩中に気が付いてくれて話しかけてくれて嬉しかった。
テニスしとる姿は勿論格好良かったけど、部活の皆と楽しそうにしとる姿も好きだった。
いつも笑顔で誰かと一緒に話しとる姿が好きだったから特に部活の時の忍足くんが好きだった。
その笑顔が私にも向けられるようになってからは凄く楽しくて嬉しかった。
「ほんまにね、凄く楽しかった。ありがとう。私――」
そこまで言うと、後ろからギュッと抱きつかれて驚いて言葉が止まってしもた。
私を抱きしめる腕は強くて身動きが取れなかった。
身動きが取れへんので、私は振り返ることも出来んと忍足くんの顔も見えへん。
どないな表情をしとるかは分からなかった。
せやけど抱きしめられとるっちゅう事に気付いたら私はドンドン恥ずかしくなっていく。