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【短編集】テニスの王子様

第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】


「はぁ…」

ため息が溢れる。
もうずっと片想いをしとった彼にこないな風に引かれてしまうのは辛いけどもうバレてしもたものはしゃあないとも思い始めてきた。

アドレスも消してクラスでももう話しかけるのを辞めよう。
どないな顔をしていいか分かれへんのもあるけど、あの忍足くんにキッパリと拒絶される方が辛すぎる。
そう思って携帯を鞄から出すと、ちょうど良く携帯がなる。
着信画面を見れば今1番恨み言を言いたい相手やった。

「…何」

無愛想な声で電話に出る。
ほんまは不在着信にしてやろうかとも思ったけど、電話に出ぇへんと延々にかかってきそうなので出た。

「そっちにな、謙也くんが行ったから暫く待っとき」
「…は?」
「せやから、謙也くんが」
「何でこの場所知っとんねん!?」
「そないなん、俺が教えたからに決まっとるやん」

ありえへんと思った。
お兄ちゃんの言葉にゾッとする。
ここの場所を教えた?誰に?忍足くんに…?

今こないな状態で会いぃと言うのか?
なんて残酷な事をするのだろうと思った。
泣きそうやった瞳からは涙がようさん溢れ出てきとった。

「お兄ちゃんの馬鹿!阿呆!最悪!悪魔!」

私はそう叫んで電話を切る。
急いでこの場を離れへんと忍足くんの速度ではすぐに来てしまう。
私はそう思ってベンチから立ち上がる。
せやけどあの速度でここに向かっとるのなら、逃げてもすぐに追いつかれてしまうのやないだろうか?
それなら一層のこと、どこぞに隠れた方がと思った瞬間に視界の端によく知る人物のシルエットが見えた。

「嘘」

そちらを見ればこっちに向かって全速力で駆けてくる忍足くんがおる。
私は慌てて逃げ出す。

「ちょ!待ちや!」
「勘弁して!」

後ろから聞こえてきた声に私はつい返事をしてしまう。
そないな事をしとる場合やないし、絶対に追いつかれるのは分かっていても条件反射で逃げ出してもた。

「逃げんといて」

後ろで忍足くんの声が聞こえる。
そう言われても立ち止まる事なんて出来んかったけど、私の速度なんてたかがしれている。
すぐに追いつかれて後ろから腕を掴まれてしもた。
せやけどどうしても忍足くんの顔を見ることは出来のうて私は俯いた。
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