第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】
「あ~…言いづらかったら悪いんやけどな、やっぱり俺と【名前】のこと兄妹と思わへなんだ?」
「…はい」
「やっぱり他人からだとそう見えるんやな」
俺の言葉に対して、気ぃ悪くするでもなくうんうんと頷きながら何ぞ一人で考えてこんでしもたのをただ見てるしかあらへんかった。
男の俺から見ても黙っとる姿はむっちゃ格好良うて驚いてしもた。
白石とはまたちごたタイプのイケメンやな…とも思う。
ほんで身近にこないに顔の整った兄がおるのに何で【名前】は俺の事を好きだなんて言ってくれたのか段々と勝手に不安になってくる。
からかっとった?
せやけど、そないな子には思われへんかった。
まだそこまで長い時間を過ごしてもおらんけれど、【名前】はそないな子やないと思えた。
「あ、一人で考え込んですまんな」
「いえ」
「【名前】ならこの先に公園あるやろ?そこにおると思うで。あいついつもヘコむとあそこの公園の奥の方にあるベンチにおる事多いから」
そう言ってお兄さんはニカッとわろた。
悪いけど迎えに言ってやってくれとも付け加えて。
俺は頷くと全速力でその場から走り去る。
去り際に「これが浪速のスピードスターの速さか」と感心した【名前】の兄の声が聞こえてきた気がした。
***
「最悪や…」
私は何か落ち込むことがあるといつも来とる公園のベンチに座っとった。
座りながら手を顔に覆わせて独り言を呟いとった。
今、この場に他の人がいたら不審者やと思われることは百も承知やった。
ほんでも私は独り言を言わんとはいられへんかった。
完全にバレてしもた。
あの兄のせいで。
どこまで性格が悪いんだと兄への恨み言を今この場で100ぐらい言いたかった。
それは家に帰ってから本人に言えばええかとも思って言葉を飲み込む。
「忍足くん…絶対引いたやろうな…」
ほんで改めて先程の出来事を思い出して凹む。
目尻に涙が溢れそうなぐらいに溜まってきとるのも感じとった。
こないな形で彼に引かれてしまうとか最悪だとウチは泣きそうになりよった。
もう一層のことここで子供の様に泣き喚いてしまおうかとも思ったけど、少しだけでも残っとった理性がそれを阻止した。