第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】
「ど、どないしたん?買い物?」
「さっきまであっちで白石達とたこ焼き食べてとった」
「もしかして見かけて声かけてくれたの?」
「おん」
忍足くんの後ろの方を見れば確かにたこ焼き屋が見える。
少し遠くて分かりにくいが、目立つのぼりにたこ焼きのイラストが見えたさかいわかりやすかった。
あないな遠いところからこっちまでわざわざ声掛けに来てくれはったっちゅう事に嬉しくなる。
「ところで【名前】、こっちの――」
「あぁ!謙也くんやろ!?」
「え?えぇ」
お兄ちゃんの会話の乱入に私は一気に現実に戻された。
忍足くんに会えた事で忘れとったが今はお兄ちゃんも一緒にいたんやった。
私は変な事を忍足くんに吹き込まれへんか心配になりお兄ちゃんをコッソリ睨んだが、それを見てニヤリとお兄ちゃんがわろたのを見て一気に嫌な予感しかしなくなった。
「【名前】からいつも話し聞いとるで。家でもな、謙也くん謙也くん煩いんやこいつ」
「ちょ!ちょっと、お兄ちゃん!!」
「え?お兄ちゃん?」
私が言って欲しくなかった話題を突然投下してくる辺り、お兄ちゃんの性格はよくないと改めて思った。
最悪過ぎる。
せやけどお兄ちゃんの言葉に一番驚いていたのは忍足くんの話をしとったっちゅう事より、兄っちゅう言葉やったようで忍足くんがぽかーんとした表情で私とお兄ちゃんを見比べとった。
「俺の話ししてへんのか【名前】」
「言えるわけ無いやろ!」
言えるわけがあれへん。女たらしで残念なイケメンの兄がおるだなんて。
そもそもどないな話題のタイミングでそないな事を話せやと言うんだと突っ込みを内心いれた。
「改めて自己紹介するわ。俺は【名字】【男性名前】や。謙也くんの話はしょっちゅう聞いてるからある程度知っとるで」
「あ、忍足謙也ですわ…。え?しょっちゅう?」
「せや。こいつな、本当いつも謙也くんが格好ええとか謙也くん見習えとか家で俺に対して煩いんや」
「え」
驚いた表情で私を見る忍足くんと目があって、恥ずかしさのあまり顔が熱くなっていくのがわかる。
最悪や。最悪すぎる。
家で話題にしてるとかほんまに恥ずかしすぎて無理やと思った。
勝手に話題にしてるとかドン引き案件じゃないか。
こんなん気色悪いとか思われてもしゃあない。