第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】
お兄ちゃんの突っ込みに私は驚いて隣を見るとニヤニヤと私を見下ろしとった。
私より恋愛偏差値が高い兄は私なんかの思考なんてお見通しなのやろう。
イラッとした。
「その顔やめてよ」
「まぁ、ええやないか」
「人の恋路を笑うとか趣味悪いわ」
「それは悪かったな。どーせ、謙也くんを見習えとか言うんやろ?」
「せやせや。お兄ちゃんの女たらしぃとこ本当最低やと思うわ」
私は思いっきり悪態をつく。
先日巻き込まれためんどくさい事件も兄の事が好いとった女性のせいやった。
私とちごて顔立ちがいい兄はとてつもなくモテた。
兄自体はその事を特に利用しようとは思ってへんが、黙っていても寄ってくる女の子たちを邪険にしぃひん所は悪くはない。
せやけど勘違いさせるような言動ばかり取るのは最悪やと思っとった。
それのせいで顔の似ておらへん私は妹やと思われへん時もあり、昔から兄のせいで厄介事に巻き込まれることが多いので辟易しとった。
「ええ加減、下手に勘違いさせんのやめや…。巻き込まれる私の身にもなってや」
「それは悪いと思っとるけどな」
「ほんまに思っとるならええ加減辞めとるやろ」
「しゃあないやんか。勝手に勘違いされるんやから」
お兄ちゃんの言葉に言い返す事は出来ひんかった。
これが何もしてなくてもモテる人間と私のような非モテの人間の差かと思った。
確かにお兄ちゃん、黙っとるとほんまに顔だけはええからな…と思った。
「なんや、そないに俺の顔見て、惚れたか?」
「アホとちゃうん」
私が呆れながら突っ込みを入れるとお兄ちゃんが私に向かっていつもの様に反論しようとしとった瞬間、私はグイッと肩を後ろに引かれてよろめいた。
驚いて振り返るとそこには先程までの話題の中心にしとった人がいて驚く。
「お、忍足くん?」
「…【名前】」
走ってきたのか、少しだけ乱れた呼吸で私を呼ぶ声にドキリと心臓が跳ねる。
いつもの様に人懐っこい表情やのうて、真剣な顔で私を見下ろす表情が見たことのない顔でいつも以上の格好良さにドキドキと私の心臓は鳴り止まなかった。