第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】
「うふふふ~。もう、ケンヤ君ったら~そんなええとこで終わらせないで、続き聞かせてぇ~な?」
「なんや小春!そんなに恋バナが聞きたいんやったら俺が今話したる!」
「なぁ、なぁ、ケンヤ~。たこ焼き食べないなら俺がもろうてもええか~?」
「自由か!お前ら!!!!」
目の前で繰り広げられる光景に突っ込みを入れるが追いつかず若干イラつく。
俺のたこ焼きに手を伸ばしてくる金ちゃんの手をバシッと叩くと不服そうにしていたので一個だけたこ焼きをあげて残りは速攻で平らげる。
「あっつ!!」
「あぁ~、慌てて食べるからやで」
白石の突っ込みが入るが気にせずたこ焼きを飲み込む。
熱々やったさかい火傷しかけてんけど、ここのたこ焼きは相変わらず美味いなと思った。
今日は休日の午前中は部活やったが午後はオフやったさかい、何となく用事のない奴らだけでたこ焼きを食べに来とった。
その時に白石に「そう言えば前に話してた【名字】さんとはどうなったんや?」なんて世間話の様に話題にされたさかい最初の出会いから話し始めれば茶々を入れたれたちゅーわけや。
自分たちで話題を振っておいてそれはないやろと思うた。
「普通に教室でも話してるし、もう付き合うてるのかと思っとったわ」
「…」
白石に痛いとこを付かれて押し黙ってもうた。
あの告白された日から時たまメールで他愛のない話をしたり、3年になったらクラス替えで一緒になりよったさかい教室で普通に会話するようになりよった。
【名前】との会話は心地良かった。
俺の話をよくわろて聞いてくれてたし、何より彼女自身もおもろい話をする子やった。
それと笑うとむっちゃ愛嬌がある子でその表情が可愛らしく、見ていて飽きへん子やと思っとった。
そないな彼女が俺の事を好いてくれとると思うと嬉しいと思うたし、すぐにでもあの時の返事をしゃんとすべきだとは思うとった。
せやけど、今の曖昧な関係がむっちゃ居心地がようて無理に抜け出す気にならへんかった。
「ヘタレなんやないですか?」
「財前。言いすぎやで」
財前の鋭い突っ込みに対していつもの威勢のええ返しも出来へんかった。
そないな俺を見て白石が財前とはちごた方向で喝を入れる。