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【短編集】テニスの王子様

第2章 片想い☆クライシス 【忍足謙也】


「す、好きです!!!!」

緊張しきっていたのか、俺の目の前にいる女子は標準語で俺にそう告げた。
告白をしながら、女子が手に持っていた可愛らしい包は俺に向けて差し出されている。

今日はバレンタインデーや。
校内がいつも以上に色めきだつ日。
親友の白石の元にはこれでもかという突っ込みを入れたくなる程の包が届いておった。
それを横目に、俺は義理でいくつかもろた包を鞄へ入れて、若干何とも言えない気分で部室を後にする。

帰ろうとテニス部の門から出た時に女子から話しかけられる。
今日の事を考えたら、もしかしてと期待して話を聞く。
せやけどいつものパターンやったらここまで期待しても白石へのチョコを渡して欲しいと頼まれるだけやもしれへんとも脳裏によぎる。

そう思った瞬間の告白やった。
正直、何を言われたか理解出来ず反応が遅れた。
浪速のスピードスターの名折れやと内心自分を叱責する。

「お、おおきに」

そう言って包を受け取ると、俯いとった女子が顔をあげる。
さっきまでまともに見ていなかった顔を改めて見ると、一見ド派手な美人とかでは無いが可愛らしい顔つきをしとった。
余程緊張しとるのか、頬は赤く染まっていて目が若干涙目になっておる。
その表情から真剣に俺に告白してくれとるのを察した。
むしろここまでしとんのに悪戯っちゅうパターンやったら俺は凹むわと脳内で突っ込みをいれた。

せやけど告白されて知らん子と突然付き合うってそれもどうなんやろ…と、ふと思った。
それって失礼なのでは?とも思うたし、何より一緒におる事で前見たく『ええ人過ぎて思うとったのとちゃうわ』とまた言われたら辛すぎるわ…。

「その…友達からでもかめへんか?」
「…はい!」

そう言うと、嬉しそうにまだ名も知らぬ女子は微笑んだ。
それがむっちゃ愛らしくて俺は――。

「その話は前も聞いたっちゅうに」
「てか、その話どこまで続けます?長くなります?」
「なっ!ここからが重要な話やっちゅーに!てか俺と【名前】の事を聞いてきたのはそっちやないか!」

俺の話の最後の部分を思いっきり砕いてきた白石と財前に突っ込みを入れる。
だが俺の突っ込みもどこ吹く風で、二人はたこ焼きを頬張る。
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