第6章 ◆湯浴み絡み ★☆☆☆☆
湯殿は大浴場となっている。
大人が十人ほど充分一緒に入れる広さがあり、絶えず湯が流れており、岩でできた浴槽は露天風呂のような造りとなっている。
主は戸を開けて中へと入った。
彼女は長谷部を先に行かせたことをここで後悔した。
湯気にまみれているとはいえ、自分の裸体をしっかり彼に見られてしまうのだ。
霧の向こう、湯の中に、すでに長谷部の姿があった。
手で体を隠しながら、恥ずかしそうにこちらへとやってくる主に、長谷部は目を奪われた。
(……主…なんて綺麗なんだ…)
髪も肌もしっとりと柔らかな雰囲気を漂わせる彼女の裸体は、湯の中にある長谷部の下半身をさらに反応させる。
チャプンという音とともに、主は長谷部から一人分離れた湯に入った。
掛け流しの湯の音だけが響いている。
二人の心臓はこれ以上ないくらい脈を打っていた。
「…長谷部さん…」
「………はいっ……」
お互いに水面を見てうつ向いていたが、ずっとそのままというわけにはいかない。
かといって今回の内容からして長谷部から開始を切り出すとは考えにくく、それに気づいた主は、自分が切り出す覚悟を決めた。
彼女は、長谷部の方を向き、空いていた距離を詰めた。
温かい湯が波を打ち、二人の体は肩が触れあうくらいに近づいた。
「長谷部さん…。こちらの上に座っていただけますか」
こちらというのは、湯の壁となっている岩場のこと。
例えそこへ腰掛けても、膝から下は湯に浸かることになり、体は冷めない。
長谷部は最後まで躊躇したが、やがて戸惑いながら、言われたとおりに腰掛けた。