第1章 ◆夜伽の通達 ★☆☆☆☆
これは政府の通達だ。審神者として反することは許されないだろう。
ならば、主に残された選択肢は、ふたつだけ。
長谷部と夜伽をするか、それ以外の刀剣男士を近侍としてするか、だ。
彼女が自分とそんなことをするなど、信じられない。しかし、それをしないとなれば、他の男が彼女の相手をすることになる。
(……そんなこと、絶対に許すものか…。主命だと言ってくれ、主…)
「…主命なら、長谷部さんは、かまわないんですか?」
ジリジリと緊張した空気の中、彼女のその言葉で、長谷部の糸はパチンと切れた。
「もちろんです!」
自分があまりにも素直な返答をしてしまったことに戸惑い、長谷部は冷静なふりをして、言い直した。
「……主命とあらば」
そう、主命とあらば、だ。そこを間違えてはいけない。
このむき出しの欲望に気づかれれば、主を困らせ、もうそばにはいられなくなる。
「そうですか…主命、なら……そう、ですよね…」
彼女は真っ赤だが、表情は切なく、複雑そうに目を伏せながら、どうしようかと思案していた。
長谷部は神の審判でも待っているかのような心地だった。
引き返せない。主だってそのはずだ。どうすべきか、今答えを出さなければならないのだから。
「……長谷部さん」
「は、はいっ」