第5章 ◆涙と語らい ★★★☆☆
“だめ“と言われてこんなに絶望したことがあるだろうか。目前まで迫っていた絶頂をおあずけされて、体の疼きが甘いものから苦しいものへと変わっていく。
「だめですか……? どうして……?」
「過去の手順では、まだ主に絶頂を与えることは許可されていません」
………そんなぁ……
「長谷部さん…」
「主…手順は厳格に守らなければなりませんから」
「……どうしてもだめですか……?」
いやだ…我慢できないよ…。
「主…あのっ……」
私は長谷部さんの裾にすがりついていた。
すると彼は困ったように後退りしたため、私はさらに起き上がって距離をつめる。
「…やだ…長谷部さんお願い…」
「…主っ…」
「お願い…お願い…お願いします…。いかせてください…我慢できないよぉ…」
我慢しなきゃだめって分かってるのに。言うこと聞くって言ったのに。
このままなんて体の奥が切なくて、耐えられない。
長谷部さんが困ってるのに止まらない…!
「…だ…だめ、です、主。手順を破ることはできません。主を守るためですよ」
「…じゃあ、どうすればいいですか…? 私、体が熱くて、いきたくて仕方ないんです…」
「…………………二日後まで、我慢してください」
「そんなぁ……」
甘えてもだめだ。長谷部さんの決意は固い…。
私だって手順を破ってはいけないことくらい分かってるけど、体が言うことを聞いてくれない。
ついに涙がポロポロと溢れてきた。
長谷部さんは慌て出すが、何もできないとばかりに私の涙を指で掬うだけだった。
「主…泣かないでください。ね? 二日後は、きっと」
「ううぅ……我慢します」
「偉いですね」
「もういいです…長谷部さんは戻ってください…」
「拗ねてしまいましたか?」
「……拗ねました」
何言ってるんだろ、私…。
長谷部さんは、ワガママが止まらない私の頭を撫でてくれた。
そのあと出ていこうと立ち上がる彼を最後まですがるような目で見ていたが、続きはしてくれないまま、本当に部屋を出ていってしまった。