第5章 ◆涙と語らい ★★★☆☆
─振り向いた途端、長谷部さんに抱き締められた。
「えっ、えっ! あの、長谷部さんっ…」
急なことで私は思わず体を離そうとしたが、彼の腕に力が込められ、すぐに胸の中へと引き戻される。
どうして? いきなりこんなことされたこと、なかったのに…。
「長谷部さん…? どうしたんですか…?」
体は熱くなるものの、どうにか落ち着いて、彼の腕の中で問いかけた。
「主。通達には『過去の手順を行うことは自由』だと書いてあります」
「……は、はい……」
「…では、一昨日の晩の続きをしましょう。時間を置かずに体をほぐした方が、次回の負担が少ないかと」
「え、あっ…あのっ……今から、ですか……?」
そんな…てっきり今夜の夜伽は話すだけで終わりだと思ってたから、心の準備ができてないのに。
でも、強制されてないのに長谷部さんからそんなこと言ってくれるなんて…本当に迷惑には思われていない証拠だ。よかった…。
……いいのかな?
今夜も、長谷部さんに触れてもらえるの…?
ゆっくり顔をあげると、長谷部さんが目を細めて顔を近づけてくる。
「長谷部さん……」
「主……」
細くつぶやいて、お互いの唇が重なった。
長谷部さんとの口付け。もう慣れてもいいはずなのに、何度しても胸が高鳴る。
「…ん…」
─ちゅ…─
長谷部さんのほうは慣れたように、私の舌を絡めとっていく。
いつもは「口付けをします」と許可をとってくれるのに、今夜は黙ったまま、すぐに舌が絡まって…。
どうしよう、少し強引なのが、すごく気持ちいい…。
「ん……ふぁ……長谷部、さん…」
「主も…そう、もっと。……上手です」
唇が繋がったまま甘く褒められると、溶けちゃいそうになる。