第5章 ◆涙と語らい ★★★☆☆
「正直に言い合えて、長谷部さんのお気持ちが分かって良かったです。……えっと、今夜の指示は、ここまでってことでしょうか」
主が言った。
そうだ。ここまでで良いはずだ。
夜伽について、俺も主も心地よく思っている、それが分かっただけで十分だ。
でも今の俺はそれだけではとても我慢できない。
「…そうですね。指示はここまでのようです」
「ふふ、なんだか触れあいの指示がないのは変な感じがしますね。…えっと、ありがとうございました、長谷部さん。これからもどうぞよろしくお願いします」
「……ええ、こちらこそ」
主は茶器を片付け、俺が戻る準備を進め始めた。
俺に向けられた小さな背中は、もうこれで終わりだと安心しきっている。
終わりにしたくない。今夜も、主に触れたい。
「……主」
「……え?」
彼女が振り向こうとするところを、俺は腕を伸ばし、胸のなかへと収めた。