第5章 ◆涙と語らい ★★★☆☆
──そして、ついに夜…
あれから長谷部さんとはまともに顔を合わせないまま、この時間がきてしまった。
気持ちが知りたいなんて思ったけど、夜伽の時間になるとどうも緊張してそれどころではなくなってしまう。
政府からの指示をこなすことでいっぱいいっぱいで…。
ああ、どうしよう、緊張する…。
「主。失礼します」
「は、はい!」
いつもどおり、長谷部さんがやってきて、部屋に入った。彼は私との間に距離を保って腰をおろし、少しうつ向いている。
「……」
「……」
うう、気まずい…。
ゆっくり休めましたか?とか、ずっと暗い顔をしていたと聞きましたが、どうかしましたか?とか、聞きたいことはあるのに、言葉が詰まって出てこない。
「主さま。通達でございます」
沈黙を破ったのは、こんのすけさんのいつもの知らせ。
長谷部さんは私の前を通りすぎ、障子の外から差し出されるそれを受け取ってくれた。
彼は目線で私に許可を求めてから、それを開いた。書かれている通達に目を通すと、怪訝そうに眉を寄せている。
…どうしよう。無理難題が書いてあるのかな。また迷惑をかけちゃうだろうか。
「長谷部さん、何て書いてありますか…?」
「え、ええ。今夜は、このように」
長谷部さんがこちらへ向けてくれた通達を、私も隣まで近づいて読んだ。