第5章 ◆涙と語らい ★★★☆☆
「主…」
「ちょうど遠征の編成をしていたところです。長谷部さんも一緒に考えていただけますか?」
「え、ええ。もちろんです。あの、主、その前に…」
「はい?」
「昨夜のこと、申し訳ありませんでした」
俺は膝を畳について腰を落としてから、誠心誠意、頭を下げた。
主を泣かせることなどあってはならない。
今後は二度と主を傷付けることはしないと誓う。
だからどうか、主…
「昨夜のこととは、なんのことですか? 長谷部さんに謝っていただくようなことは何もなかったと思いますよ」
え?
「いえ! 俺の身勝手な振る舞いで主を泣かせてしまいました。とても許していただけることとは思っておりません」
「そんな。大げさですよ。長谷部さんにはいつもご協力していただいて感謝しています。身勝手なことなんてなかったですよ。私こそ、涙を見せるなんて審神者失格です。あのときはつい、山姥切さんが来たりと色々あって、驚いて涙が出てしまっただけなんです」
「主…」
昨夜の主はたしかに悲しげな顔をしていたのに、なぜ今日は何事もなかったかのように振る舞われるのだろう。
俺の謝罪も、受け止めていただけない。