第1章 ◆夜伽の通達 ★☆☆☆☆
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翌日の午後、長谷部は、内番の交替があったことを報告するため、主の部屋を訪ねた。
「主、少しよろしいですか」
『え、あっ…長谷部さん!?』
中から一瞬戸惑った主の返事が聞こえ、長谷部は眉を寄せたが、すぐに『どうぞ』と言われ、襖を開けた。
「内番について報告があるのですが …あの、何かございましたか?」
「……い、いえ、何も……」
しかし明らかに様子がおかしかった。
顔が赤く、気分が良さそうではない。
「主?」
「な、何でもありませんからっ…」
─ズキン─
何でもない、と言われると、自分を頼ってはくれないのかと胸が痛くなった。
それに、彼女のつらそうな顔は見たくない。何か気がかりがあるなら、理由が知りたい。
「…俺には、話して下さらないのでしょうか」
「長谷部さんっ…」
長谷部が少し目を伏せると、彼女はハッとして、そばに寄った。
「あの、私も本当は、長谷部さんにお話したいのですが…」
「お聞きします!」
「…でも、その…きっと長谷部さんを、困らせてしまうと思うんです…」
彼女の言葉につい身を乗りだし、長谷部は彼女の肩をつかんでいた。
「どんなことでもお聞きします! 主っ、お話くださいっ」
彼女に相談されて困ることなど、何もない。
どんなことでも解決に尽力してみせる。
そんな使命感のもと、これは彼女に自分の忠誠心を試されているのかと、長谷部は意地になっていた。