第4章 ◆愛撫の快感 ★★★☆☆
「あんた、今晩ずっと俺と手入れ部屋に籠ることを長谷部に言ってあるのか」
「も、もちろん! 私の近侍を務めて下さっているんですから、どこにいるかは逐一報告しています」
「……で? 何か言ってたか」
「はい。長谷部さんも付き添って下さると申し出て下さいました。手入れ部屋の扉の外に待機しています、と。…でも申し訳ないので、もちろんお断りしました。一晩中ずっとなんて、疲れてしまうでしょうし…」
山姥切さんは、またじっとりとした視線を私に送ってくる。
「…あんた、ちょっと無防備すぎないか」
「え?」
「俺に何かされるとは思い付かないのか」
何かって、何……?
私が怪訝な目を向けると、山姥切さんは私の手をつかみ、そのまま引き寄せた。
鼻が触れそうな距離まで引っ張られ、私は驚いて身を引く。
「……や、山姥切、さん…?」
口付けをしそうな距離だった。
長谷部さんとはしたけれど、山姥切さんとは…何か違った。
「俺がその気だったらあんたは奪われてたぞ。扉の外に長谷部が待機していれば、安心できるだろ。今度からはそうしてもらえ。…俺もアイツから変な疑いを持たれるより、その方がいい」
「…は、はい…」
ビックリした……。
一瞬焦ったけれど、冷めた表情のまま変わらない山姥切さんを見ると、今のは彼が私に自分の甘さを分からせるための行動だと分かった。
男の人に対する警戒心が足りないってこと…?
審神者なんだから、なるべく皆に壁を作らず平等に接したほうがいいと思っていた。
でも、それじゃダメだったのかな…。
……あれ?
「山姥切さん、傷、もう全部治ってますね。体力はどうですか?」
そう声をかけると、彼は自分の体を眺め、腕を動かしてみせる。
「ああ、元に戻ってる。……いつもよりやけに早いな」
この傷ならいつもは一晩かかるのに、今回はほんの数時間で治った。
これって、もしかして……夜伽のおかげ?