第4章 ◆愛撫の快感 ★★★☆☆
◆◆◆◆
翌日の夜。
今晩はずっと、手入れ部屋で、山姥切さんの傷の手当てをしていた。
長い遠征で頑張ってくれた彼は体力も落ちていて、背中にはたくさんの細かい刀傷がついている。
「山姥切さん、痛くないですか」
「俺は平気だ。それよりあんたは疲れないのか。放っとくと無理ばっかりするだろ」
山姥切さんは、私が初めて出会った刀剣男士で、いわゆる“初期刀”というもの。
審神者になりたての頃は、しばらく彼一人で私を支えてくれていたから、他の皆とは少し違う、特別な思い入れがある。
「…それとも、なにか悩んでるのか」
こんなとき、私の変化にすぐに気づいてくれるのも、いつも山姥切さんだ。
「……山姥切さんには、なんでもバレてしまいますね」
「あんたが笑ってないと心配する奴がたくさんいるだろ。……近侍の長谷部とかな」
長谷部さんの名前を出され、私はカッと熱くなった。
「……分かりやすいよな、あんた」
「あ、あ、あああ……えっと…」
山姥切さんはため息をつくと、背中をさすっている私にちらりと目を向けた。
「珍しく、恋煩いでもしてるのか」
彼から“恋煩い”なんて言葉が出て、私はますます恥ずかしくなった。
「山姥切さん…」
彼はここへ来たときは冷たくて少し怖い人だったのに、今は感情豊かになった。
だからだろうか、私の長谷部さんへの想いもすぐに気付かれてしまった。