第3章 ◆甘い口付け ★★☆☆☆
(わっ…、わわわ…)
長谷部の唇が軽く触れたのを感じると、主はつい目を開けた。
彼は唇を触れさせただけで一旦離れ、至近距離のまま、目を泳がせている彼女にわずかに笑いかける。
「…主、大丈夫ですか」
「…は、い…」
(どうしよう…長谷部さんと、口付けしちゃった…)
視界がトロンとぼやけてく。
(…格好いい…)
見たこともないような甘い顔を向ける長谷部に、主は見惚れ、夢見心地となった。
長谷部ももちろん緊張しているのだが、主の緊張が自分以上だと感じると、彼女を可愛らしく思い、笑いかける余裕があったのだ。
男である自分が彼女を導いて差し上げなければ、という使命感もある。
(主、やはり慣れていらっしゃらない…。なんて可愛らしい……)
彼女との口付けは待ちわびた感覚だった。
耳への愛撫をした夜も、本当は彼女に口付けをしたくてたまらなかった。