第3章 ◆甘い口付け ★★☆☆☆
「…主、では…」
長谷部は前のめりになり、主の両肩に手を置いた。
彼はいつの間にか手袋を外しており、それは膝の横に綺麗に置かれている。
わざわざ手袋を外して触れられることに、主は胸が鳴った。
「…長谷部さん…」
「…抱き締めてもよろしいでしょうか」
そう問われ、主はすでに、呼吸が苦しくなるくらいに胸がいっぱいになった。
「は、い…」
コクリと頷くと、目の前の長谷部の体が徐々に近づいてくる。
距離を詰める彼の足の間に自分の両膝が入り込み、今までにないくらいに近い。
恥ずかしくて下ばかり向いていると、長谷部の腕がふわりと背中に回され、そのまま優しく引き寄せられた。
戸惑う主を気遣うように、長谷部はゆっくりと、わざとぎこちなく、腕に力を込めていく。
(…わ、わ…長谷部さんっ…)
パズルのピースのように、二人の体は凹凸の隙間を埋めていき、密着していった。
(ああ、主……)
全身に感じる彼女の体の感触に、長谷部はたまらなくなっていた。
浴衣一枚に包まれただけの彼女の体からは、温かさや柔らかさが伝わってくる。
身長差は抱き合うと少し縮まり、ちょうど長谷部の首もとに彼女の頭がくる。
長谷部はその頭の後ろに手をそえて、自分の胸のなかに押し付けた。