第3章 ◆甘い口付け ★★☆☆☆
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翌日の晩。
長谷部は主の部屋へ来て、通達が来るまで茶を飲んで待機していた。
部屋は行灯の明かりがぼんやりとしているだけで、お互いもその光に照らされている部分しか見えない。
長谷部は今日は着流しではなく、普段本丸を歩く軽装をしている。
鎧はないにしても、襟元や袖口がきっちりと整えられていた。
(長谷部さん、手袋も着けたまま…)
主は少し気になっていた。
耳を素手で愛撫されたとき、長谷部をとても近くに感じられた。
素手で触られると気持ちが溶け合う感覚があったが、今日はそれをしてくれないのか、それとも予防線を張られているのか。
自分だけがまた舞い上がっているのかと切なくなった。
「主、寒くはありませんか」
「はい。大丈夫です」
通達を待つわずかな間でも、長谷部は自分を気遣ってくれる。
彼の包み込むような優しさには、抗えず胸が鳴った。
(今日は、長谷部さんと、一体どんな…)