第17章 ◆番外編4「贈り物」
「しかしですねっ、主っ…」
「長谷部さんは今日一日ずっと一緒にいたんですからいいじゃないですか…」
「なっ…主! 酷いです!」
「酷くありません! 順番です!」
二人はおそらく初めて子供のような言い合いをしたのではないだろうか。
分離長谷部もこれには驚いた様子で呆然とする。
しかし、彼は主との密愛を途中で邪魔されているため、体の熱がどうにもおさまらない。
「…おい。主は順番だとおっしゃっているだろう。主命を守れ」
このように分離長谷部は主の提案にしたたかに乗っかり、また彼女を奪い返して抱き締めた。
「貴様っ…やはり姑息な…!」
自分の分身に対して悪口ばかりの近侍長谷部はさらに主を取り返そうとするが、分離長谷部はそれを上手くかわし、腕の中の主に口づけを再開する。
「…ん…長谷部さん…」
「ああ…可愛い、主…。貴女と口づけできるなんて夢のようです…」
分離長谷部の初心な反応に、主もまんざらではない。
もう一人の長谷部がそばにいるというのに、二人の世界に入って口づけを続ける。
─ちゅ…ぴちゃ…─
三人のいる部屋に生々しい口づけの音が響き始め、仲間はずれの近侍長谷部は嫉妬に狂っていた。
しかし、これ以上言うことを聞いてくれない主を止めることはできずに脱力し、今度は彼が切ない表情で見ていることとなったのだ。