第17章 ◆番外編4「贈り物」
「主っ…!」
もう我慢ならないと、長谷部は主の口内をもう一度侵し始める。
唇から唇へ舌を行き来させ、二人の体もそれと同様に絡まり出した。
─ぴちゃ…ぴちゃ…─
舌の音をたてながら、長谷部に覆い被さられて布団に沈む主。
二人の欲望のままに行為が始まるかに思えたが─…
「主に触るな!」
突然、障子をスパンと開け放って登場したのはもう一人の長谷部。
自室に戻ったはずの近侍長谷部であった。
「長谷部さんっ…!?」
慌て始める主。
近侍長谷部は愛しい主が自分といえど他の男に押し倒されている図に目の色を変え、すごい剣幕で彼女を奪いとりながら分離長谷部の腹に蹴りを入れて引き剥がす。
「くっ…」
「やはり主の優しさにつけこんだか下衆め! 主に触れていいのは俺だけだ!」
「ま、まって長谷部さん、これは私が…」
「主も何故! このまがい物に抱かれようとするなど…! 会いに行ってはいけないと忠告したはずです!」
これでは修羅場になってしまう。
まるで浮気のように責められているが、主はこれは浮気ではないという確固とした意思があり、蹴られた長谷部をかばいながら近侍長谷部に言い返す。
「そんなことを言われたって…私にとっては、どちらも同じ長谷部さんです。困っているなら助けてあげたいし、優しくしてあげたいし、それ以上のこともしたいです…。どちらも大好きなのに、どちらか一方を拒否するなんて無理ですよ…」
か細い声での反論でも、近侍長谷部には堪えたらしく返事がない。