第17章 ◆番外編4「贈り物」
「長谷部さん、何か探し物をしていたんですか?」
そういえば、と。
彼女は彼がここで何やら動き回っていたことを思い出して尋ねた。
長谷部はそれを聞かれると言葉に詰まっていたが、やがて観念して探し物の正体を話し出す。
「…その…髪飾りを探していました。木箱に入った…つまみ細工の…」
「…髪飾り?」
それを聞いた主は、すぐに心当たりを思い出し、「ああ!」と声をあげた。
「もしかして、これのことですか?」
そして主はそう言いながら後ろを向き、彼に後頭部の髪を留めている髪飾りを見せた。
赤いつまみ細工の小花がついた、控えめで可愛らしい髪飾りである。
「えっ…あの、どうして主が…」
「これは…以前長谷部さんにいただいたものです」
そう聞くと、長谷部は切ない表情で肩を落とした。
「……そうですか。その髪飾りを主に贈ろうとしていました。そこで記憶が途切れているのですが………もうすでに、その先の俺がお渡ししていたんですね」
長谷部は複雑だった。
彼女を想って選んだ髪飾り。
それをどんなふうに贈ろうか、贈ったら喜んでくれるだろうか。そんなことを考えていたはずが、それは自分ではない自分によってもうすでに終えられていたのだ。