第17章 ◆番外編4「贈り物」
中にいた長谷部はすぐに障子を開け、彼女を迎え入れた。
彼は戸惑いながらも、嬉しさを隠せない様子である。
「主…どうしたのですか? こんなに夜遅くに…」
「…気になって会いに来ちゃいました」
いたずらな笑顔を見せた主に、長谷部は胸が高鳴った。
主はすでに恋人として甘える表情をするようになっていたが、それまでの記憶がない長谷部からすれば彼女の行動は不意打ちばかり。
夜中に部屋を訪ねることも、長谷部相手であれば彼女にとっては普通のことだが、この長谷部にとってはそうではないのだ。
「主…わざわざ俺のために…?」
「はい。今日一日、お話できなくてごめんなさい。…近侍の長谷部さんが厳しくて」
正直に伝えると、長谷部の表情は曇る。
しかし、曇った後、赤くなった。
「……あ、あの…主と俺は…今では恋仲、なんですよね…? ……信じられません…。貴女のことをずっと想っていましたが、それがいつか報われるなんて…」
「私もずっと好きだったんですよ。長谷部さんに想いを伝えていただいたので、恋人同士になれました」
「…主…」
事実確認をした長谷部だが、この長谷部には主に口づけたりだとか手を出すような勇気はまだない。
そのため、ただ熱っぽい視線で彼女を見つめるにとどまっている。