第17章 ◆番外編4「贈り物」
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夕餉の時間にも近侍の長谷部に付き添われていたため、主は分離長谷部と話すことはできなかった。
彼は鶴丸など他の刀剣男士たちに賑やかに囲まれていたが、どこか寂しそうである。
(やっぱり、お話したいな…)
近侍の長谷部に茶を注がれながらも、主は彼のことが気になって仕方がない。
それに、会いに行くと言ったのにその約束を果たせていないままなのだ。
(…よし…!)
─夕餉を終え、近侍の長谷部と「おやすみなさい」と挨拶を交わすと、この日はそれぞれの部屋で就寝することとなった。
主は出ていった長谷部が部屋へ戻ったことを確認すると、こっそり分離長谷部に与えられた部屋へと向かう。
(ごめんなさい…長谷部さん…でも私、放っておけません…)
近侍の長谷部への懺悔をしつつ、分離長谷部の部屋の前に到着すると、障子の隙間から中の様子をうかがった。
そわそわと部屋の中を動いている分離長谷部。
着流し姿で落ち着きがなく、焦った表情をしていた。
棚や引き出しを確認する素振りを見せ、何かを探しているようだった。
気になった主は、さっそく障子の外から声をかける。
「……長谷部さん、長谷部さん」
中の彼の動きがピタッと止まった。
「…あ、あるじ…?」
その返事は、驚き、困惑、喜び。さまざまな感情がこもっていた。