第17章 ◆番外編4「贈り物」
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主は自分の仕事を終えると、手伝っていた近侍の長谷部に、畑にいる分離長谷部に会いに行きたいと申し出た。
「…主がわざわざ会いに行く必要はありません」
近侍の長谷部は良い顔をせず、今にも行こうとしていた彼女の手首を掴んで引き留めた。
「でも…お一人だけ記憶がないなんて不安だと思うんです。せめて私にできることをして差し上げたいのですが…」
「いけません! 奴は主のそういう優しいところにつけこむに決まっています! いいですか、奴は澄ました顔をしていても、貴女のことが好きで仕方ないんですよ。隙あらば自分のものにしたいと思っているんです。そんな男に気を許してはなりません!」
「…そうなんですね…」
まるで過去に遡って告白をされているような気分になり、主は思わず顔を赤くする。
それに気づいた長谷部は照れ隠しに咳払いをしてから、彼女の手首を引いて抱き寄せた。
「…貴女を誰にも渡したくありません。それがたとえ俺であっても」
熱のこもった声でそう呟いてから、長谷部は彼女に口づける。
「…ん…」
「…主…」
─ちゅ…ちゅぱ…─
二人は深く舌を絡ませ、分かりきった愛情を確認し合う。
そのまま畳に倒れ込み、体ごと絡まり合い始めた。
この行為でうやむやになり結局内番の長谷部には会いに行けず、その日の夜を迎えるのだった。