第17章 ◆番外編4「贈り物」
燭台切が話を進める。
「保護って言うけど、どうする? 主。何か仕事をしてもらうの?」
すると分離長谷部は「俺は主の近侍だ」と呟き、皆がシンとする。
すぐさま本体長谷部が苛立った様子で反論した。
「主の近侍は俺だ。相手が俺であろうとそれは譲らん! 貴様は指示があるまで昼寝でもしていろ!」
「何だと!? 主のお役に立つのが俺の役目だ! 貴様こそ引っ込んでいろ!」
二人の長谷部が喧嘩をする奇々怪々な展開に、皆は主の指示を仰ごうと困った視線を向ける。
主はしばらく考え、二人の長谷部の目を平等に見ながら優しく告げた。
「ちょうどお手伝いしてもらっているお仕事もあるので、引き続き近侍は元の長谷部さんにお願いします。こちらの長谷部さんは、畑の内番に混ざっていただいてもよろしいですか? 内番の格好をしていたほうが見分けもつきやすいと思うので…」
ふんぞり返る本体長谷部と、ショックを受ける分離長谷部。
畑仕事の鶴丸は分離長谷部の肩に手を置き「よろしくな!」と声をかけ、すでにこの驚きの事態を楽しんでいる様子だ。
何も悪くないのにこんなことになってしまった分離長谷部が可哀想で、主は解散する前に彼にこっそりと話しかけた。
「長谷部さん。大丈夫ですよ。あとで会いに行きますね」
「…主…」
混乱の中でも優しい主がたったひとつの心の支えとなり、分離長谷部はかすかな笑顔を見せた。