第17章 ◆番外編4「贈り物」
すぐには理解できなかった短刀たちは、皆一斉に首を傾げた。
短刀たちへの説明も兼ねて、一期一振が要約する。
「つまりは…以前本体に錬結させたはずの長谷部さんが分離され、二人になってしまった、と」
大人組と主もそれに頷く。
続いて鶴丸が「で、どっちの長谷部が本体なんだ?」と尋ねると、左の長谷部が「俺だ!」と食いぎみに名乗りをあげた。
右の長谷部はこれについては反論しない。
事態をきちんと理解しているようで、困惑気味にうつ向いている。
それもそのはず、彼は連結されてから現在までの記憶を失くしているため、通達のとおりであれば分離した方の長谷部に間違いないのだ。
時期で言えば、主と長谷部に夜伽の指示が出て、紆余曲折を経て両想いとなったところの記憶がすっぽりと抜けている。
右の長谷部にとっては、朝起きたら突然、恋い焦がれていた主と恋人同士となっているもう一人の自分がいたのだから、その戸惑いは尋常ではない。
主は彼のその不安を感じとり、不憫に思っていた。