第3章 ◆甘い口付け ★★☆☆☆
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こんのすけはそれだけ伝達すると、部屋を出ていった。
話を一通り聞いた長谷部は苛立ちを隠せなかった。
(もし昨夜、我慢できずに最後までしていたら、主は他の者と夜伽をすることになっていたというのか…)
実際にそうなりかけていた。同意を得ずに行う気は毛頭なかったが、最後までしてもいいか、と申し出る寸前のところまでいっていた。
(…そんな大事なこと、先に言っておけ)
政府から事情を知らされていないこんのすけに怒ったところでどうしようもないことは分かっているが、長谷部は主が他の刀剣男士と夜伽をする場面を想像し、ぶつけようのない苛立ちが悶々と募っていく。
「長谷部さん、どうかしましたか?」
「…いえ」
(主は誰にも渡さない…魂を通わせるのは俺だけだ…)
「長谷部さん…?」
一点を睨んで動かない長谷部を不安げに覗き込んだ主は、やがてうつむき、目を伏せた。
「…長谷部さん、無理なことを頼んで本当に申し訳ありません。夜伽は二日に一度ということですから、今夜はゆっくり休んでくださいね」
「主…?」