第16章 ◆番外編3「見合い」
「じゃあ、全部長谷部くんのためだったっていうこと? だから内緒でお見合いなんてしたの?」
「長谷部さんを信じていないわけじゃないんです。でも…もう、あの日みたいな…長谷部さんがいなくなっちゃうんじゃないかって思いには耐えられなくて…不安で仕方ないんですっ…長谷部さんのためじゃないです…私のためです…私の心が弱いから…だからどうしても、お守りがほしくて…」
「そんなっ…なら最初から長谷部くんにもそう言えば良かったのに…」
「…言ったら行かせてもらえたと思いますか…?」
「………ああ…なるほど…」
話が一旦落ち着くと、燭台切さんはため息をついた。
そして、障子の向こうに声をかける。
「……だってさ、長谷部くん。いるんでしょ?」
「えっ…」
慌てて燭台切さんにならって障子を見ると、ぼんやりと長谷部さんの影が写っている。
うそ…全部聞かれてたってこと…?
「そ、そんなっ…」
混乱する私を放って燭台切さんは立ち上がり、お守りを私に返した。
「じゃ、僕はもう行くよ」と言い残してから障子を開けて、長谷部さんの影とすれ違って去っていく。
そして、長谷部さんの影はゆっくりとこっちへ歩いて来て、障子の中へと入ってきた。
「…主…」
姿を現した長谷部さんは困惑の表情をしていて、私は自分が恥ずかしくて目を逸らしてしまった。