第16章 ◆番外編3「見合い」
あまりの衝撃に、すぐに目を開けた。
初めて、長谷部さんに口づけできないと言われてしまった。
「で…きない、ですか…?」
「畑仕事をして汚れていますので。…すみません」
違う…そんなの言い訳だ。
長谷部さんが私のお願いを断ることなんて、今までなかった。
私と口づけしたくないということ。
「……長谷部さん…」
「お風邪をひきますから、中へ戻ってください」
「…はい…」
部屋に戻って脱力した私は、絶望して何も考えられなかった。
仕事も全く手につかない。
─ちょうどそのとき、報酬のお守りが届いた。
私はすぐに任務完了の報告を出したのに、ルーズな先輩さんが報告を延び延びにしていたから、報酬が届くのがこんなに遅くなったのだ。
私は届いたお守りを箱から出して、眺めた。
……こんな状態で、受け取ってもらえるだろうか。
長谷部さんを騙して手に入れたお守り。
彼はこんなもの、欲しいと思ってくれないかも…。
そう思うと、ついに涙が溢れてきた。
「うう…うっ…ごめんなさい、長谷部さんっ…」
私は何をしているんだろう。
こんなの、審神者としても、長谷部さんの恋人としても、失格だ。