第16章 ◆番外編3「見合い」
「…長谷部さん…どうして…」
“どうしてこんなことを”と尋ねようとしても、その理由は分かりきっていた。
私が長谷部さんを裏切ったからだ。
やっぱりどんな理由があろうと、長谷部さんに黙ってお見合いなんてしてはいけなかった。
それでも強行したのは、すべて私の身勝手。
本当はお守りなんてなくても今の長谷部さんはどんな任務だってこなせるのに、あのときのことがトラウマになっているのは私だ。
…だからこんな顔をさせてしまった。
「…どうぞ戻って、見合いを続けてください主。俺が止める権利なんてないのでしょうから。……邪魔をして申し訳ありませんでした」
そんなことない…。
私はもう長谷部さんのものなんだから、止めたって邪魔をしたっていいに決まってる。
でも…でも、今は…
「…戻ります、長谷部さん」
そう告げると、彼はさらに悲しい顔をした後で、乱れに乱れた着物をサッと直してくれた。
襖を開け、「大丈夫かー?」と尋ねてくる先輩さんに笑顔を返してから、何事もなかったかのように話を再開させる。
このお見合いが終わるまで、長谷部さんはまた一言も話そうとはしなかった。